くれないの旅〜東北芸工大の紅染絹布

(去る「BENIBANAフィンランド公演」における)

 自分の役ならではのシチュエーションですが、語り部は舞台の山場で一つのピークを迎え、身を伏せる死のメタファーを潜り抜け、黄の紅染布を授かります。
 そこから再生し立ち上がっていく時、私を動かすものは作為ではなく、目の前の布から受ける深みと温かみある本物の力であり、内から湧き出ずるものだけをもって成ります。
 それこそは本物の証。そしてその結果としての身体表現を添えてフィンランドの人に届けられたことが嬉しく思います。

 エジプト原産と言われる紅花が、シルクロードを渡り東の果ての地で愛され、そしてまた西方のくにへと巡る。
 その紅花に乗って東北の心、日本の心、そしてその奥に秘められた、自然と繋がらんと欲する普遍的で切実な心、そういったものが持ち帰られることは、この上ない自然からの恩恵を目の当たりにする思いがします。

 この作品は題材とする紅の布の、本物の力をもって真の完成を見るものですね。その布を育み送り出してくださった東北芸術工科大学、多くの方々の力に、深く感謝の念を抱きます。